概要
消費行動としての生産行為に金を払っている可能性
なぜDX市場は巨大なのに、あるいはテクノロジーの便益が極めて大きいのに、しかし平均的にはそれに見合った利益が生まれないのか。それは生産行為自体を消費している構図にあるのではないか。生産性は消費財になりうる。需要と消費能力というハードな制約を無視すべきではない。
市場における矛盾したメッセージ
- 生産性改革や技術的ボトルネックの解消に対する強い期待
- IT市場のさらなる巨大化
- IT投資の成功率が低い、有意義なROI達成率は低い、という継続的な観測
- AIに関するソローパラドクスの懸念
- ITコストに喘ぐ巨大企業、「経営自治の喪失」の危機感に対するEU政府の動向
生産性が高いのは多くの場合で明らかなのに、利益にはならない。コストがコントロールできない、重い。
生産性を高めても利益にならないケース
利益化できない生産行為をより多く消費している
- 利益化する方法には基本的に変化がない
- 利益化の出口戦略がより太くならないと、生産性を上げても、成果物がスタックする
- 生産性が解決するのは生産性だけであり、需要や消費を解決しないので、需要や消費が旺盛で、それに対して生産性が足を引っ張っているときに、問題を解決する
非対称的に、一部のテクノロジーの供給者側が利益を上げる構造
無限の生産
- 「生産性や生産行為そのものを消費させている」から
- および、その延長線上で、成果物の在庫管理や、成果物市場そのものの運営も行っている
- 一方で、生産の成果物は消費能力に依存する、食べられる分しか売れないし、買える分しか売れない
無限の(そして目に見えない)デジタル在庫
- デジタルの成果物は物理的な在庫と違って「在庫管理」の意識が低く、何より帳簿に出現しないので、無駄な生産をしても評価が下がりにくい(最近は明確にコストに跳ね始めていて、意識が変わってきている)
- そのため、コスト管理をしていないと「資金の限界までどこまでも生産し、目に見えにくい在庫を生み続ける」ことができ、青天井に利益が膨らむ
非対称な利益
- ゴールドラッシュに来た人が儲からず、一方で、つるはしを売ったり宿を提供する側(あるいは金を掘る権利を与える側)が儲ける構図と同じ
- 金は出なくてもいい、金の期待で生産する人たちに、生産を無限に売っている
生産性が高いのにROIが出ない例
- 高性能タブレットと専用キーボードを25万くらいかけて買ったとき、その便益を望んでいて実際に有効に役立てられる人と、それによってROIを出せる人の違い
- AIのProグレードを月1.6万円で契約する場合に、便益を必要としている人と、実際にROIを出せる人の違い
- このような構図をさまざまなところに組み込むのが(ROIやコストに無頓着な)生産性の向上で、AIの場合は応用範囲が広いため、どこにでもさらに高い生産性を組み込む余地がある
便益としての投資の評価の難しさ
ROIを求めない便益のための投資として、生産性投資を運用することは道理にかなう。しかし、ROIの見通しが立たない、おそらく出ない、ということは経済的にはただコストが増えていくということを意味してもいる。この正当性は事後評価しかできないので、事前に正当化しようとすれば正当化できる。それは実際にビジョンに対する投資という意味を持つ。しかし一方では、消費環境には困難なトレンドと現物的な制約があるため、機会投資による損失が成り立ちやすい。
無理の予兆
収益構造が市場ではなく、政府資金・軍事競争・税・金融に答えを求めている
- 無限に生産できるとは言っても、資金には限度があるため、「生産の消費」にも限度がある
- 生産と消費の不整合が続くと、生産活動をする法人のキャッシュフローが悪化し、市場の消費能力がさらに悪化し、さらに生産を消費するための資金が苦しくなる
- 市場の原理による回収が成立しないので、市場のキャッシュフローに直接介入する、信用の母数を増やしてそれを手にいれる、という形に変わり始めている
マクロ経済的な問題
- 資本が「消費されないもの」「労働報酬の総取り」に一極集中すると、金が労働者・消費者を経由しなくなる
- 経済がより早いスピードで社会的な信用を失う
- 経済が偏ることで、社会の調整メカニズムとして機能しなくなり、「民主主義的な状態」を事実上毀損していくリスクもある